「我々がどれほど貧しいか、誰も知らない」 甘粛地震が暴いた中共「貧困撲滅」のウソ

2023/12/28 更新: 2024/02/06

中国甘粛省で18日深夜、マグニチュード(M)6.2級の地震が発生。数十万戸の家屋が倒壊などの被害を受け、被災地は廃墟と化した。零下10数度の酷寒のなか、大勢の被災民が家を失い、ビニールシートなどでの野宿を余儀なくされている。

しかし、ここは中国共産党がかつて「貧困から脱却した」と主張していた場所の1つだった。

中国共産党の首魁・習近平は2021年7月、党創立100周年に合わせた式典で「農村部の貧困撲滅を達成した」とアピールしている。

今回地震が起きた西部甘粛省の積石山県は、かつて同省に23ある「極貧県」の1つだった。2019年、中共当局は「同県内の2989世帯、1万3546人が貧困から脱却した」と宣言した。続いて、2020年にも「県内の貧困未脱却世帯630世帯、2821人の全員が貧困から脱却した」と発表していた。

しかし、今回の地震の惨状を伝える現地の画像から、地震によって倒壊した家屋の多くが「干し煉瓦づくり」であったことがわかる。焼き煉瓦ではない「干し煉瓦」は、建材自体が著しく強度に乏しい。その生活は、とても「貧困を脱出した農村」には見えないものであった。

 

中国甘粛省の臨夏回族自治州積石山県を襲った地震により、甚大な被害を受けた町の様子、2023年12月19日撮影。(Jia Shengyang/VCG via Getty Images △)

 

そのようななか、現地の77歲になる低所得世帯の被災者が「北京青年報」に対して話した、ある言葉が注目され、瞬く間に中国SNSウェイボー(微博)のホットリサーチ入りした。

その言葉は「もし地震がなかったら、ここ(甘粛)がどれだけ貧しいか、誰も知らないだろう(沒人知道我們有多窮)」である。

また一部の中国メディアは、今回の地震を機に、現地の貧困の実態を調査するため現地取材を敢行した。しかし関連する報道は現在、当局による封殺に遭っている。

被災地を取材した中国メディア「財新網」の記者は「積石山県大河家鎮付近のいくつかの村はいずれも同じ状況で、多くの家屋が倒壊した。たとえ倒壊を免れても、亀裂のない家屋はほとんどなかった」と明かしている。

今回の地震発生は深夜(18日23時59分ごろ)であり、夜間は冷え込んでいたため、多くの住民は屋内で就寝中であった。そのため、死亡した村民のほとんどは、倒壊した家屋の下敷きになって亡くなったという。

被災地の真相の一部を伝えた「財新網」22日付の記事は世論の注目を集めたが、その後、当局によって封殺されている。

つまり中共の地元当局は、今回の甘粛省を襲った地震によって、その被害の実態が外部に知られるのを恐れるだけでなく、この地域が「貧困撲滅を達成した」と宣言していながら、それが全くの虚偽であったと暴露されることを極度に恐れているのだ。

その虚偽を象徴する一例が、以下の画像である。

今回の地震ではがれた「壁紙」の下に現れたのは、貧困時代そのままの土壁であった。つまり、この村の「貧困撲滅」は、安っぽい壁紙を貼って隠しただけの大ウソだったのである。

現地当局が、なぜ地震発生後わずか15時間で「救助活動の終了」を宣言したのか。

考えられる理由として、1つには、財政難にあえぐ地方政府が、わざわざ費用をかけて住民を助けることを早々に諦めたから。もう1つが、民間の救助隊など外部の人間が現地に入ることによって、被災状況の悲惨さと「貧困撲滅」のウソが、いずれも複合的に露呈してしまうからではないか。

今回の地震で、実際どれほどの人が亡くなったのか。どれほどの住民が家を失い、零下10数度の酷寒のなかに今も放置されているか。中共当局は、その全てを隠蔽し続けている。

 

地震が暴いた「脱貧困」のウソの1例。古い土壁に貼られた「壁紙」が、地震によって剥がれている。(SNSより)

 

 

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。
関連特集: 中国