中国甘粛省で2023年12月18日深夜、マグニチュード(M)6.2級の地震が発生した。被災地は廃墟と化し、零下10数度の酷寒のなか、家を失った大勢の被災民が簡易なテントで野宿を余儀なくされている。
そのようななか、防寒用高級アパレルを製造するカナダの企業カナダグース (CANADA GOOSE)は同月21日に「高地や寒冷地で使用できる高品質のダウンジャケット2千着(5億円以上に相当)などの防寒用物資を被災地に寄贈する」と公表した。
寄贈された高級羽毛服「すぐさまフリマに出品」
ネット上に出回っている写真によると、カナダグースから寄贈された高級ダウンジャケットは、すでに甘粛省の被災地に到着した模様だ。
しかし、中国共産党の腐敗した体制下では、災害救援のため各地から贈られた善意の物資が地元当局によって着服、転売されることは常態化している。
そのため、この「高価な救援物資」が、本当に酷寒の中にいる被災民の手に渡るかどうか、華人圏のSNSでは熱い議論が交わされている。
カナダグース製造のダウンジャケットは世界的にも有名で、購入すれば1着あたりの価格は20万円近くもする。
カナダグースの寄付発表から5日後、被災地に寄贈したと思われる高級羽毛服の一部が中国最大のフリマアプリ「閑魚」で「甘粛省の被災地を援助するグース(援助甘肅震區鵝)」という紹介文付きのカナダグースのダウンジャケットが1着8500元(約17万円)で取引されていたことがわかった。
この「転売疑惑事件」が世論の注目を集めると、上海慈善基金会と甘粛省の救災指揮部は、急いで「ネット上の転売情報はデマだ」と否定した。しかし、当局の主張を信じる世論は皆無である。
中共政府が「裏で支持する」慈善団体の腐敗
被災民は帰る家を失い、零下10数度の酷寒のなか、露天でのテント暮らしを強いられている。そのようななか、現地政府と慈善団体は結託して「金儲け」に大忙しのようだ。
被災地で撮影された写真のなかには、カナダグースのダウンジャケットを身に着けた当局者と思われる男性の姿があった。
また、被災地名や「救援物資」と書かれた荷物が積まれたトラックが、なぜか「卸売市場」のなかに停車していることを捉えた動画もネットに流れている。
米国在住の中国人権弁護士の吳紹平氏は、次のように指摘する。
「中共の慈善団体は、なにか大きな災害が起こるたびに、必ずと言っていいほど様々なスキャンダルが暴露されている。そうであるにもかかわらず、長い間、誰も責任を問われていない。これはつまり、慈善団体による腐敗行為が、中共政府によって裏で支持されているということだ」
中国には、一部ではあるが、被災民を救済する「本物の慈善団体」もある。しかし多くの場合、そうした「本物」は、地元当局によって被災地に入ることを阻まれている。
「本物」を阻む理由は何か。端的に言えば、被災地の悲惨な状況が外部に知られることと、地元当局による「不正な金儲け」がやりにくくなるからだ。
(トラックに積んだ救援物資が運ばれたのは、なんと「卸売市場」だった)
(「卸売市場」で売られる救援物資。段ボール箱に、被災地の名が明記されている)
(被災地の様子。ビニールシートの簡易テントは、四方から寒風が吹き込む)
(被災地の様子。屋外で寝ることにより、凍死する悲劇も起きている)
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