中共は国内経済への対応に苦慮している 

2024/05/20 更新: 2024/05/21

中国共産党が4月30日に開催した中央政治局会議では、中国における経済問題に対処するためのより効果的な政策が発表されるはずだった。しかし、これまでのところ経済にほとんど、あるいはまったく実質的な効果をもたらしていない既存の政策の焼き直しに過ぎなかった。

これまでの中共指導部の振る舞いを考えると、7月に開催される第20期中央委員会第3回総会(3中総会)でも特別な政策が発表されるとの期待が薄いのは致し方ない。実際、効果的な政策が欠如していることから、北京は中国社会における深刻な経済的課題に対処する方法をほとんど、あるいはまったく考えていないことが伺える。

中国経済は低迷を続けている。年明けの数か月は、最悪期は脱し経済活動が回復しつつあるとの希望も出てきた。しかし、最近の統計によりその希望は消し去られた。購買担当者調査によれば、経済活動は再び減速し、成長と衰退の狭間で停滞している。これは、昨年の減速と比べればましだが、楽観的な根拠にはなり得ない。サービス業は年初のプラスから一転してマイナスとなった。第1四半期における工業部門企業利益は、国有企業や民間企業を問わず、前年同期比で急減した。

言うまでもなく、不動産危機は膿を出し続け、住宅販売と建築業の足を引っ張っている。中国不動産に関する情報筋によると、デベロッパー上位100社の売上高は、昨年の水準を約43%下回り、3月以降で13%減、不動産危機が勃発する前の2020年12月の水準を80%も下回っている。輸出は増加しているが、これは中国経済の健全性を示すというよりも、人民元の価値が下落したことで、中国が競合他社に対して一過性の優位性を得たことを示すものである。

上記のような悲観的な経済ニュースを前にして、北京の指導者らが提示できるのは、明らかに不十分な小手先の対策か、もっと悪いことに、より効果的な対策を漠然と約束するだけである。3月の両会では、指導部は中国人民銀行(PBOC)に金利を引き下げさせ、金融支援対象として適切な不動産開発事業をリストにまとめる「ホワイトリスト」というプログラムについて議論した。

4月末の中央政治局会議では、より実質的な政策が発表されるだろうという観測だったのだが、共産党により提示されたのは、経済政策の繰り返しと、近いうちに何かするという漠然とした約束だけだった。

「ホワイトリスト」にはそれなりのメリットがあるが、これまでのところ、北京が関与しているのはごくわずかなレベルであり、その努力はほとんど必要性を満たしていない。これまでのところ、資金の流れは2021年に発表された中国不動産大手の恒大集団(エバーグランデ)の最初の失敗の5%を超えるのがやっとで、それ以降、碧桂園(カントリー・ガーデン)を含む他のデベロッパーの失敗は、はるかに上回っている。

このプログラムが大幅かつ急速に拡大しない限り、「ホワイトリスト」は政策というよりも中国共産党の会議での話題作りに過ぎず、ましてや不動産危機の救済策にはならない。同様に、北京の国債発行額は1兆元(約21兆5千億円)とかなり大きいが、11兆ドル(約1714兆6305億円)と見積もられる地方政府の債務超過をへこませるのがやっとのことだと言ったところだろう。

中国人民銀行の利下げはさらに印象が薄い。これまで日銀は5回の利下げを行ったが、合計で0.5%ポイント以下だった。このような小さな動きで景気が上向くとは、たとえ最高の状況であっても到底思えない。中国人民銀行が金利を引き下げている間、中国では年率約2%の緩やかなインフレが年率約0.8%の緩やかなデフレに転じている。

利下げが借りたお金と返済するお金の購買力に与えた影響を考慮すると、中国の実質金利は事実上上昇し、景気刺激策ではなく、借り入れと消費の阻害要因として作用している。利下げ開始時のインセンティブを維持するためには、2.8ポイントの利下げが必要だった。借り入れと支出を促進するために、もっと多くのことをしなければならないだろう。

中共は、国内で売れ残っている住宅を「消化」するための政策を近く説明すると表明した。この住宅の多くは中国人が住みたがらない場所にあるため、それは難しい課題だろう。しかし、今のところ北京が市民に示したのは、「今取り組んでいる」ということだけだ。会合に出席した人々は、地方自治体の過剰債務に取り組む「徹底的な」計画も約束された。しかし、誰もそのような計画の詳細を聞いていないのだ。

新たな政策は、今年7月に予定されている3中総会で登場するのではないかとの憶測もある。何かが生まれるかもしれないが、これまでの指導部の振る舞いを考えると、課題に対処するために必要な大きな政策転換は、特に起こりそうもない。3中総会が予定通りに開催されるかどうかもわからない。中国共産党の統治綱領では、3中総会が年に少なくとも1回開催することになっているが、中国では前回の全体会議から17か月が経過しており、これは毛沢東以来の長さである。明らかに、党と国家の指導部は何を言うべきか、何をすべきかをわかっていない。

会議が計画通りに進み、中共指導部が力強い政策を発表すれば、景気は回復に向かうかもしれない。しかし、これは2つの大きな可能性である。より可能性が高いのは、最近のパターンが優勢になり、中国経済は今後しばらくの間苦境に立たされることだろう。

ミルトン・エズラティは、The National Interestの寄稿編集者であり、ニューヨーク州立大学バッファロー校の人間資本研究センターの関連組織であり、ニューヨークに拠点を置くコミュニケーション会社Vestedの主席エコノミストである。Vestedに加わる前は、Lord、Abbett & Coの主席マーケットストラテジスト兼エコノミストを務めていた。彼は頻繁にCity Journalに寄稿し、Forbesのブログに定期的に投稿している。最新の著書は「Thirty Tomorrows: The Next Three Decades of Globalization, Demographics, and How We Will Live」。
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