国際 バイデン前政権時とは一変したウクライナ戦争をめぐる国際情勢

トランプ氏がウ大統領を「独裁者」批判 プーチン氏「ドナルドに会いたい」…米政権交代で一変する米欧関係

2025/02/20 更新: 2025/02/20

トランプ米大統領が就任して以降、米国国内だけでなく、国際情勢も様変わりしており、バイデン前政権とは一風変わった外交姿勢を見せている。

トランプ政権はプーチン大統領との直接交渉を開始し、前政権では考えられなかった米ロ主導によるウクライナ戦争の停戦協議が行われている。

12日、トランプ氏とプーチン露大統領は電話会談を行い、ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟は「現実的ではない」との見解を示したうえで、ウクライナ戦争の停戦に向けた協議開始に合意。18日には、米ロ外相による会合がサウジアラビアで開かれ、ウクライナでの戦争終結をめぐる協議が行われた。

プーチン氏は19日、訪問先の露西部サンクトペテルブルクで記者団に対し、サウジアラビアで行われた米ロ外相会談を高く評価するとともに「ドナルドに会いたい」とトランプ氏をファーストネームで呼び、米ロ首脳会談に前向きな姿勢を示した。

米ロ間の距離感が縮まり、ウクライナと欧州の頭越しに停戦協議が行われる中、ゼレンスキー大統領の不満が高まっており、トランプ氏との間で非難の応酬が繰り広げられている。

ゼレンスキー氏は14日、米ロが12日にウクライナ戦争の停戦に向けた協議開始に合意したことについて、自国が停戦協議の場に招かれなかったとし、「驚きだ」と述べた。「独立国家として、我が国抜きの決定は受け入れられない」と強調した。

この発言を受け、トランプ大統領は「失望した」と反応。また、ゼレンスキー氏の支持率について「4%に下がっている」と発言した。

ゼレンスキー氏は19日「トランプ氏は偽情報の空間に生きている」と応酬。さらに「仮に今、私を交代させようとする動きがあったとしても、うまくいくことはないだろう」と語り、自身が続投する意志を強く示した。

これに対し、トランプ氏は自身のSNSで19日、ゼレンスキー氏を「選挙のない独裁者」だと強く批判。「ゼレンスキー氏が迅速に行動しなければ国は残らないだろう」と警告した。ウクライナはロシアの侵攻による戒厳令を理由に大統領選挙の実施を見送っている。

「そこそこ成功したコメディアンがアメリカに3500億ドルを費やすよう説得し、勝てない戦争、始める必要のなかった戦争に突入させた」と指摘した。

またバンス副大統領も、19日にデイリーメール紙とのインタビューで「ゼレンスキーが公のメディアで大統領の悪口を言うことで、大統領の考えを変えようという考えは…トランプ大統領を知る誰もが、それはこの政権に対する非道なやり方だと言うだろう」と語っている。

2024年9月27日、ニューヨークで会談するトランプ大統領とウクライナのゼレンスキー大統領(Photo by Alex Kent / GETTY IMAGES NORTH AMERICA / Getty Images via AFP)

「独裁者」との批判に対して、ゼレンスキー氏は直接反論していないが、欧州の首脳からは非難の声があがっている。

ドイツのショルツ首相は19日、SNSでゼレンスキー大統領について「3年間近く、ロシアの容赦のない侵略戦争から自国を防衛してきた」と語り「ゼレンスキー大統領の民主的正当性を否定するのは単純に誤っており、危険だ」と反発した。

イギリスのスターマー首相は19日夜、ゼレンスキー氏と電話会談したことを明らかにし「イギリスが第二次世界大戦中にそうしたように、戦時中に選挙を中止することは合理的だ。ゼレンスキー大統領は民主的に選ばれた指導者だ」などと述べ、ゼレンスキー氏への支持を表明した。

ウクライナおよびEU、NATOと歩調を合わせるバイデン前大統領に対し、独自路線でウクライナ戦争の終結を目指すトランプ大統領が就任したことで、米欧関係に新たな変化が生じている。 

なぜ欧州と歩調合せず、独自路線で解決図るのか

トランプ氏は、アメリカ第一主義」に基づき、ウクライナへの巨額の軍事・経済支援を「アメリカ国民の負担になる」として指摘。米国では支援疲れの声も広がっている中、トランプ氏は米国がウクライナ戦争に多大な資金を投入することには懐疑的で、欧州諸国にもっと責任を持たせ、支援を増やさせるべきだという立場を強調してきた。

また「ウクライナ戦争が長引けば長引くほど、アメリカの負担が増大する」一方で、欧州諸国がウクライナに十分な支援を行っていないと繰り返し批判しており、ウクライナに対する支援の米欧の差にも不平を漏らしている。

特に、NATOに対して「欧州諸国が防衛費を十分に負担していない」と指摘してきており、そのためNATOと歩調を合わせるよりも、ロシアとの直接交渉を通じて米国の関与を最小限に抑えた形で戦争を終わらせようとしている可能性がある。

バイデン政権はウクライナ支援を強く推進し、欧州とも連携してロシアへの制裁を強化していたが、トランプ氏はこの戦略を転換し、制裁を一部緩和することでロシアとの交渉の余地を作ろうとしている可能性もある。そのため、欧州諸国の厳しい対ロシア政策とは異なるアプローチを取っていると考えられる。

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