参院選2025公示 物価高と減税争点に激突 各党の明暗分かれる選挙戦が幕開け

2025/07/03 更新: 2025/07/03

7月3日に公示された第27回参議院選挙は、物価高と減税が最大の争点となっている。与野党や新興勢力が激しく競い、1人区や無党派層の動向が選挙結果を左右する。

7月3日、第27回参議院選挙が公示され、7月20日の投開票日に向けて、17日間に及ぶ選挙戦が本格的にスタートした。今回は248議席のうち、任期満了分と欠員1を含む125議席をめぐって、全国の候補者が火花を散らす。

立候補者数は選挙区・比例代表をあわせて518人(同日午前11時半時点)に達し、うち女性候補が全体の約30%を占めるなど、過去2番目の高水準となった。選挙戦では、物価高騰への対策や税制改革、社会保障、外交・安全保障といった国民生活に直結する争点が並び、有権者の関心も高まっている。

最大の争点は「物価高」 与野党ともに対策競う

今回の参院選における最大の争点は、深刻な物価高への対応である。与野党ともにこの問題を最重要テーマに掲げ、給付金支給や消費税の時限的な引き下げ、燃料価格や米価高騰への対応策を打ち出している。

与党・自民党は石破茂首相のもと、「物価上昇を上回る賃金上昇の実現」や「迅速な給付金支給」を前面に押し出し、現実的な経済運営能力をアピールする。一方、立憲民主党の野田佳彦代表は「消費税の時限的ゼロ%」を掲げ、現政権の経済政策に対する批判を強めている。その他、日本維新の会(以後、維新)や国民民主党(以後、国民民主)、参政党、日本共産党(以後、共産党)、れいわ新選組(以後、れいわ)などもそれぞれ消費税減税や廃止を主張し、家計支援策で有権者の支持獲得を狙う。

税制改革では、「103万円の壁」や基礎控除の見直しなど、働き方や所得に関する制度改革が注目を集める。社会保障においても年金・医療・介護・子育て支援といった国民の不安を背景に、各党が政策の違いを打ち出している。

勢力図の鍵を握る「1人区」 野党共闘が奏功するか

全国45選挙区のうち32が「1人区」となっており、ここでの勝敗が全体の勢力図を左右する。野党はこのうち16選挙区で候補者を一本化し、与党に対する包囲網を敷いた。特に立憲民主党(以後 立憲)と共産党の連携によって、接戦が予想される地域が増えており、1人区の攻防は注目の焦点だ。

与党(自民・公明)は、非改選議席を含めて50議席以上を確保すれば参院の過半数を維持できる。しかし、物価高対策への不満や保守層の離反といった複合的要因が自民党に逆風をもたらしており、予断を許さない展開となっている。

各党の立候補状況と選挙戦略

候補者数で最多は自民党で、選挙区48名、比例区31名を擁立。次いで立憲が選挙区29名、比例22名を立て、攻勢を強める。国民民主は選挙区22名、比例19名、維新は選挙区15名、比例13名とやや控えめな態勢で臨む。

注目を集めているのは、ネットを中心に急速に存在感を増す参政党で、選挙区45名、比例10名という全国規模の候補者擁立に踏み切っている。これまでの地方選での実績や話題性を背景に、無党派層や保守層からの支持拡大を狙う。

自民党に広がる危機感 支持率低下と保守層の離反

6月時点の世論調査によると、自民党の支持率は27.0%と前月から4ポイント超の下落を記録。物価高への不満が強く、特に若年層からの支持が低迷している。石破内閣の支持率は38%で、不支持率と拮抗しており、「実行力不足」との声も根強い。

従来の岩盤支持層である保守層からは、「石破首相のリベラル寄りな姿勢」や「外国人政策への不満」などが噴出しており、参政党など新興勢力に支持が流れている現状だ。「本来の自民党らしさが失われた」「小手先の対応ばかり」といった声が離反の背景にある。

また、無党派層が35.6%に達するなど、有権者の政党離れも顕著だ。こうした流動層の動向次第では、選挙戦の結果が大きく変わる可能性がある。

立憲民主党、議席増へ手応え 1人区共闘が追い風

立憲は、直近の支持率が8.4%と上昇傾向にあり、国民民主や維新を上回る勢いを見せている。選挙区と比例あわせて51名を擁立し、積極的な攻勢を展開中だ。

特に1人区では共産党との候補者一本化が進み、自民党との接戦が各地で予想されている。比例代表でも支持率の上昇に支えられ、議席の上積みが見込まれる。

政治評論家や選挙プランナーの多くは「立憲民主党は現有議席からの上積みが見込める」と指摘しており、野党第一党としての立場をさらに強固にしつつある。

維新は低空飛行 党内に広がる焦燥感

一方、維新は、党内目標を「6議席以上」と控えめに設定。現有10議席の維持すら危ぶまれており、党内からは「目標が低すぎる」との不満も漏れる。

支持率は5.3%前後で、野党中位グループに位置するが、目立った伸びは見られない。若年層や都市部で一定の支持を維持しているものの、地方議員の離党や組織力の低下も悪い影響を及ぼし、厳しい選挙戦が予想されている。

国民民主、党勢頭打ち 不祥事と政策発言が影響

国民民主は、6月時点の支持率が10%と、前月の14%から大幅に減少。山尾志桜里氏の公認問題や、党代表による失言が党の信頼性を損ね、若年層や無党派層の支持が離れた。

地方選挙での苦戦も重なり、「党勢に勢いが感じられない」との声が広がっている。一時は野党第1党をうかがう勢いを見せたが、現在は立憲民主に大きく水をあけられている。

参政党、急浮上の注目株 ネット発信力で拡大

今選挙で急速に支持を広げているのが参政党である。ネットやSNSでの発信力を武器に、「日本人ファースト」「消費税廃止」など明確な主張で注目を集めている。

支持層は無党派層を中心に、フリーランス、中年女性、自営業者など多様で、既存政党への不信感を背景に勢いを増している。

特に国民民主の支持が頭打ちとなり、無党派層や自民党に失望した保守層の一部が参政党に流れていると指摘されている。

6月の都議選・兵庫県議選での実績が全国に波及し、「新しい選択肢」としての存在感を高めている。

有権者の選択が日本の針路を決める

今回の参院選は、物価高や税制、社会保障など、生活に密着した争点が並び、有権者の選択が今後の日本の方向性を大きく左右する。自民党が参院過半数を維持できるか、立憲民主を中心とする野党勢力がどこまで迫るか、そして新興勢力・参政党がどこまで食い込めるかが注目される。

17日間の選挙戦の行方とともに、有権者一人ひとりの判断が問われる夏の決戦が始まった。

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