蚊が媒介するだけで人から人へは感染しない「チクングニア熱」。それなのに広東省の街は、連日まき散らされる消毒の白煙で視界すら奪われている。現地の人々は大真面目にこう皮肉る「蚊より人間の自分のほうが先に絶滅するかもしれない」。怒りを通り越し、もはや笑うしかない。

実際、9月21~27日のわずか1週間で、広東省全体の新規感染者は3153人、そのうち江門(こうもん)市だけで2927人を占めたとされる(公式データ)。しかし中共の数字は常に不透明で、地元住民からは「実際にはもっと深刻だ」との証言が相次ぐ。病院には発熱患者が殺到し、ベッドは足りず入院も困難な状況だという。
(街中で消毒用の白煙をまき散らす当局者、2025年9月、広東省江門市)
感染が拡大するなかでも、複数の専門家は「人から人には感染しない病気に都市封鎖や一律隔離は過剰だ」と指摘する。だが当局は耳を貸さず、「人命第一」と強調しながら「不惜一切代価(どんな犠牲を払っても)蚊を根絶せよ」と号令をかけ、強制検査や封鎖を繰り返している。

「蚊を退治せよ!」のスローガンの下、街は白煙に覆われ、家庭菜園や鉢植えまで撤去された。強制検査、住宅封鎖、市場封鎖、公園封鎖、外出制限、工事現場の停止など、日常のすべてが制限されている。町には防護服姿の防疫要員が徘徊し、人手だけでは足りずドローンまで薬剤散布に駆り出される。発熱が確認されれば強制隔離、病棟を抜け出せば処罰が待つ。

住民からは「蚊退治ではなく生活破壊だ」との嘆きも漏れる。町に広がる異様な光景は、防疫の名を借りた統制ショーの縮図にほかならない。

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