欧州議会は6月16日、越境弾圧を一切容認しない立場を取るよう欧州連合(EU)および加盟国に呼びかけ、EU域内で発生するあらゆる形態の越境弾圧を厳格に取り締まり、制裁することを求める決議案を可決した。
決議案(PDF)は賛成434票、反対128票、棄権104票で可決された。決議は複数回にわたり中国共産党を名指しし、同党が世界最大規模かつ最も体系的な「越境弾圧」を展開していると指摘している。
越境弾圧は国家主権と安全を侵害
欧州議会は決議の中で、越境弾圧を外国による干渉の手段と位置づけ、「自由、民主、平等、法の支配および人権尊重といった価値観を損なう」ものであり、「基本的権利および国際法に違反し、EUおよび加盟国の主権と安全も侵害する」と指摘した。
「EU域内に居住するすべての人は、民族や国籍にかかわらず、EU法(『EU基本権憲章』を含む)に基づく平等な権利と保護を享受し、関係国家およびEU当局はそれを保障・保護しなければならない」
決議は越境弾圧(TNR)を、「(外国の)政権またはその代理人が国境を越えて自国の管轄外で活動し、身体的(攻撃)、心理的、デジタル、法的、行政的その他の手段を用いて基本的権利を侵害し、海外に居住する個人や集団、およびその家族や支援ネットワークを威嚇、脅迫、沈黙させ、強要し、統制し、または危害を加える意図的・体系的で標的化された弾圧行為」と定義している。
中国共産党を繰り返し名指し
決議は「越境弾圧は主に権威主義体制によって実施されており、越境弾圧を行っている主な国家にはロシア、中国、イラン、ベラルーシが含まれる」と指摘した。
「中国は世界最大規模かつ最も体系的な『越境弾圧』を展開しており、国家関連組織、海外警察サービス拠点、華僑団体、学術・学生組織、メディア機関、デジタルネットワークといった広範な域外インフラに依拠し、監視、嫌がらせ、法的・経済的圧力、国際刑事警察機構(インターポール)の制度悪用、強制送還、家族への脅迫などを通じ、海外コミュニティの個人を特定・監視・威嚇・強要している」
「人権擁護団体の報告によれば、中国は欧州の領土内に違法な秘密警察拠点を設置し、代理人を用いて監視や強制送還を実施しており、その手段には家族への脅迫や誘拐も含まれる」
「香港の2020年『国家安全法』および2024年『国家安全維持条例』は域外適用を主張し、起訴や引き渡しの脅しで欧州の政治関係者を標的とするなど、越境弾圧に用いられている。EU域内に居住する活動家や学者に対しても逮捕状や懸賞指名手配が発出されている」
行動および制裁の提言
決議は数十項目の提言を示している。主な内容は次の通りである。
・EU加盟国で行われるものを含め、越境弾圧および外国による干渉を最も強い言葉で非難すること
・欧州委員会および加盟国に対し、EU域内のあらゆる形態の越境弾圧に断固かつ協調的で包括的な対応を取る「不容認」の姿勢を確立するよう求めること
・加盟国に対し、越境弾圧に関する規定を国内法体系に組み込むよう促すこと
・越境弾圧には深刻な過少報告の問題があるとし、実態把握のため信頼できるデータ収集が不可欠であるとすること
・市民社会組織が、デジタル監視、金融的圧力、行政的嫌がらせ、代理人による威圧など、隠蔽されやすい形態の越境弾圧の記録で重要な役割を果たしていると認めること
・加盟国に対し、影響を受けやすい在外コミュニティと連携するよう呼びかけること
・法執行、司法、金融、サイバーセキュリティ、移民および庇護分野の職員に対し、越境弾圧の識別と対応に関する専門的訓練を提供するよう求めること
・欧州委員会およびEEASに対し、ユーロポール等と連携し、EU域内および世界規模の事案を対象とした越境弾圧のデータ収集・監視・報告の仕組みを構築し、政策の策定・改善・評価に活用すること
・理事会に対し、越境弾圧対応の調整官を任命し、中央連絡窓口およびEU全体の戦略策定の支援役として機能させること
・欧州委員会およびEEASに対し、越境弾圧の関与者をEUの世界的人権制裁制度(いわゆる「EU版マグニツキー法」)の対象に体系的に含めることを検討し、今後導入される越境組織犯罪対策の制裁制度でも越境弾圧を制裁理由として明確に位置付けること
国際的著名弁護士:具体的解決策を提示、模範的
国際的に著名な人権弁護士デービッド・マタス(David Matas)は大紀元の取材に対し、「この決議は詳細で、越境弾圧の問題を具体的に示し、実行可能な解決策を提示している。越境弾圧に対処しようとするすべての国にとって、行動計画となる模範的な文書である」と述べた。
「この決議は警鐘であり、力強い号令でもある。各国に越境弾圧の現実と危険性を認識させるべきである。提言は現実的で多くの側面を網羅しており、欧州各国政府はすべての提言を実行すべきで、EU理事会も行動を取るべきである」
ワシントンのシンクタンク専門家:決議は第一歩
ワシントンD.C.の米国第一政策研究所(AFPI)の中国政策担当上級ディレクター、ピエロ・トッツィ(Piero Tozzi)は大紀元の取材に対し、「欧州議会の『不容認』決議と、最近英国の裁判所がロンドンの香港経済貿易代表部の責任者に亡命反体制派を標的とした罪で有罪判決を下したことは、中国共産党による『長い腕』の弾圧が欧州で行われている現実に欧州が気づき始めたことを示している」と述べた。
「中国国家安全部の工作員や統一戦線関係者による悪意ある活動、例えば神韻公演への嫌がらせから反体制派への身体的攻撃に至る行為について、人々の認識は依然として十分ではない」
「今回の投票は第一歩に過ぎない。今後は、国家および地方レベルの法執行機関、検察官、政治関係者、コミュニティの指導者、そして一般市民に対し、越境弾圧を見分ける方法を教育し、適切な通報手段を整備することが必要である。そうすることで、行為を阻止し、加害者を法の裁きにかけることができる」
EU報道官:人権政策で対応
EUの報道官は大紀元の問い合わせに対する電子メールで、「越境弾圧は国際人権法に違反する」と述べ、「公共の安全と秩序の維持はEU加盟国の専属的権限である」と指摘した。
「EUは世界的にこうした活動への監視を強化しており、人権政策の枠組みを通じて対応している。関係国政府との関係や自らの権限の範囲内で、正式な抗議、人権対話での議題化、多国間フォーラムでの行動など、既存の手段を用いて適切に対応している」
2020年12月7日、EU理事会はEUの世界的人権制裁制度を設立し、世界各地で重大な人権侵害に関与する個人および団体に対し、資産凍結、EUへの入域禁止、EUの個人・企業による資金や経済資源の提供禁止などの標的型制裁を科すことを可能とした。
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