これまで、中共政府が新疆ウイグル自治区や遼寧省など一部の地域で実行してきた刃物規制は、今年から北京などでも実施されていることがわかった。
これにより、調理器具の販売店などでは、料理用の牛刀や中華包丁だけでなく、小型のペティナイフから料理バサミに至るまで、鍵付きケースでの保管が求められ、客が直接手に取ることはできなくなっている。
北京市内の飲食店でも、厨房で料理人が使う包丁はスチールワイヤー(または金属製のチェーン)につなぎ、ワイヤーの長さの範囲内での使用が義務付けられることになった。
このような過剰とも言える刃物規制によって、中国共産党が内包する「体制側の恐怖心」が一層浮き彫りになっている。
今月2日、北京の公安局から、北京のあるショッピングモールに「刃物類の規制」を求める「緊急通知」があり、そのスクリーンショットがSNSに投稿された。モール内の飲食店の厨房で使用される全ての包丁に、スチールワイヤーを取り付けることを求めている。
「ワイヤーの長さは、まな板が使われる位置より長くなってはいけない」などの細かい要求まで設けられている。しかも、ワイヤーの取り付け作業は、通知された2日から「1月5日までに完了しなければならない」とされている。
この通達には、ワイヤーを取り付ける見本写真が2枚添付されている。写真のなかの包丁には、いずれも柄(持ち手)の部分にワイヤーが付けられている。
北京市における「刃物管理」は、今回が初めてではなく、早くには2012年に現地の官製メディアが報じている。つまりこの時から、北京の公安当局は市民に対し、包丁を購入する際には本名の登録を求めていた。
当時でも、一部のデパートで販売される包丁の棚には鍵がかかっており、客は手に取ることなく、ガラス越しに包丁を吟味しなければならなかった。今回の通知は、それをさらに強化したものと言える。
今月4日には、広東省深圳市のあるスーパーマーケットでも、包丁の棚には施錠されていることを示す画像がネットに投稿されている。その商品棚に掲げられた顧客への「お知らせ」には、包丁を購入する際の流れについての説明があった。
それによると、顧客が包丁を購入したい場合は、まずQRコードをスキャンして個人情報を登録する。そのうえで、近くにいる店員に鍵を開けてもらって包丁を選ぶ、という。
中共政府による、料理包丁をふくむ刃物への厳しい管理は、新疆ウイグル自治区から始まっている。新疆の市民は、家庭で料理包丁を使用するにも、実名での登録が必要となる。レストランや露店の食堂でも、料理包丁には施錠が義務づけられている。
しかも近年、このような刃物の管理措置は、新疆以外の省でも相次いで導入されるようになった。一部の都市の商店の販売用刃物が「鍵つきケース」のなかに置かれている様子や、飲食店の料理人が「スチールワイヤーでつながれた包丁」で調理する様子を映した動画は、SNSに数多く出回っている。
こうした背景には、中国経済の悪化にともない、民衆の生活不安と現体制に対する不満が膨張する一方であることが挙げられる。実際、追い詰められた一般市民や露天商が料理包丁を手に、公安や「城管(都市管理をする当局者)」に立ち向かうニュースは後を絶たないばかりか、年々増加傾向にある。
しかし、それは人を殺傷する銃器や爆発物ではなく、店舗や家庭で使う料理包丁などの「道具」である。たかが道具に、中共はなぜそれほど神経質になるのか。
その根底には、まさに体制側に「民衆から報復されるような悪政をやっている」という自覚があるからであろう。
つまり、民衆を恐怖政治で統率しようとする体制自身が、実は巨大な恐怖心にかられているのだ。
そのような意味で「料理包丁に規制をかける」という他国ではありえない事象は、中共が確実に崩壊へ向かっている1つの証左でもある。
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