中国 全盛期165店舗の高級ジムチェーン 残ったのはわずか2店

中国フィットネス業界に異例の「閉店ラッシュ」 全国規模で拡大中

2025/08/18 更新: 2025/08/18

中国のフィットネス業界で、かつてない規模の閉店ラッシュが続いている。

全盛期に全国165店舗を展開していた高級ジムのチェーン店「威爾仕(Will’s Gym)」も2025年7月時点で営業しているのは上海市内のわずか2店舗だけだ。2024年10月に始まった「閉店ラッシュ」以降、同チェーンの消費者窓口には返金を求める申請が累計で1万件近く寄せられ、全国で数万人が返金を待ち続けている状況となっている。

多くのジムの年会費制は「ポンジ詐欺」に似た構造だ。これは、新規会員から先に集めた会費を、既存会員のサービスや返金に充てる仕組みで、常に新しい会員を獲得し続けなければ維持できない。経済が低迷し新規会員が減れば、資金の流れはたちまち途絶え、運営は行き詰まる。

業界関係者は、ジムの年会費制は新規会員の会費で既存会員のサービス費用を穴埋めする「ポンジ詐欺」にほかならなず、経済の低迷と消費縮小が重なる環境では維持できないと揃って指摘する。

あるジムチェーンの創業者は「うちのジムの場合、開業時に特別割引を行い、『2年会員になってくれれば以降の3年は無料』というような販売方法で巨額の前受け金を集めてそれを運営資金に回している。しかし、新規会員が減れば雪崩のように資金繰りが崩壊する」と業界実態を中国メディアに明かしている。

実際、全国各地でジムの突然の閉店や経営者の失踪が相次いでいる。西安市のあるジムは予告なしに閉店し、約300人が被害を訴えており、なかには入会して2か月足らずという運の悪い会員もいた。また、杭州市の武術系スタジオではコーチ給与など100万元(約2千万円)以上が未払いのまま経営者が失踪した。貴陽市の大型ジム「天空一号」も突然閉鎖し、全国で300店舗以上のチェーンを展開する児童向けスポーツ教室「卓躍児童運動館」でも多くの店のオーナーが「夜逃げ」する事例が多発している。いずれも中国メディアが取り上げた事例であり、氷山の一角に過ぎない。

「ポンジ詐欺」という構造的欠陥に加え、ジム通いは生活必需品ではないという特性も、消費縮小の中で露呈した。住宅ローンや子育て、医療費が家計を圧迫する中、「痩せたい気持ち」がなくなったわけではないが、「公園で走ればいい」「ダンベルを買えば十分」といった節約志向が広がり、消費者がジムにかける費用は減少し、場合によっては需要そのものが消えている。

あるジムの会員データによれば、顧客の年間平均ジム支出は2022年には1.2万元(約25万円)だったが、2025年には4800元(約10万円)まで落ち込み、利用者の7割が年会費ではなく月払いを選ぶようになっている。

背景には、高額な都市一等地の家賃(年間数千万円規模)、人件費の高さ(パーソナルトレーナーの給与比率40%)、豪華な内装費という、経営を圧迫する三つの高コスト構造がある。加えて、年会費収入が売上の7割を占める依存体質も致命的で、新規会員数が減ればすぐに資金ショートを引き起こす仕組みとなっている。

そのため、先に集めた会費でやりくりする経営が続かなくなれば、残るのは閉ざされたシャッターと、戻らぬ会費だけである。

イメージ画像 (大紀元)
李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
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