10月25日の夜、河南省商丘(しょうきゅう)市の夜景スポット「日月河観景橋」で、29歳の男性・宋さんが橋の欄干から転落した。
夜10時ごろ、夜景を眺めながら友人を待っていた宋さんは、足を滑らせて体勢を崩し、とっさに欄干へ手をついた。しかしその瞬間、透明な板がパリッと割れ、支えを失った体はそのまま7メートル下の河岸に落下した。男性は全身に15か所以上の骨折と肺に損傷を負い、複数の手術と長期の治療が必要な重傷と診断された。
事故のあと、家族は補償を求めて関係先を回った。だが、観光地の管理担当、建設を請け負った業者、市の都市整備部門はいずれも「うちの責任ではない」と言い張り、家族はたらい回しにされた。
宋さんの姉は、中国メディアに対し怒りをにじませながら語った。
「いったい誰が強化ガラスをプラスチックに替えたのか。なぜ事故から4日たっても欄干が修理されないのか、そして誰が責任を取るのか」
事故の4日後、彼女は再び現場を訪れて写真を撮影した。そこには、割れたプラスチック板の破片が地面に散乱し、欠けた部分はぽっかりと空いたままだった。車や歩行者がすぐそばを通るのに、警告の看板もテープもない。欄干の一部は、本来、金属製の支柱に強化ガラスを組み合わせた構造であるが、薄いプラスチック板で補修していた。その厚さはスマートフォンのケースほどしかなく、触れるとヒビが入るほど劣化していたという。

さらに事故の4か月前には、市民は欄干が壊れて危険だと行政当局に報告を寄せていた。当局は修理を指示したと説明したが、実際には何の対応もしていなかった。その怠慢さが事故につながったとして、地元では「起きるべくして起きた人災だ」と、強い怒りの声が上がっている。
日月河観景橋は、市が観光のシンボルとして整備した全長7.2キロの大型プロジェクトで、完成からわずか3年しか経っていない。見た目の美しさばかりを追い、安全を後回しにした結果が、この痛ましい事故を招いた。
誰も責任を取らず、誰も説明しない。そんな体制のままでは、次の犠牲者が出るのも時間の問題である。
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