アジア開発銀行(ADB)は2026年5月3日、ウズベキスタン・サマルカンドで開催された第59回ADB年次総会において、アジア・太平洋地域における重要鉱物のサプライチェーン構築を支援するため、「重要鉱物から製造業への移行に向けたファイナンシング・パートナーシップ・ファシリティ(The Critical Minerals-to-Manufacturing Financing Partnership Facility)」を立ち上げた。本ファシリティは、同地域において重要鉱物から製造業へとつながるバリューチェーンのプロジェクト準備や、官民の投資推進を後押しするものである。
設立の背景
現在、クリーンエネルギーや蓄電池、電気自動車、デジタル技術の発展に伴い、これらに不可欠な重要鉱物の需要が急速に拡大している。しかし、神田眞人ADB総裁が「アジア・太平洋地域は、単なる原材料供給地にとどまるべきではない」と指摘するように、これまで同地域は採掘中心の役割に留まることが多かった。 本ファシリティは、こうした状況を打破し、緊急性と公平性をもって責任あるサプライチェーンを構築することを目指している。開発途上加盟国が採掘のみならず、加工、製造、リサイクルといったより高付加価値な産業へと移行し、先進製造分野での競争力向上や国内での新たな雇用・技術の獲得を実現することが、設立の大きな背景である。
支援枠組みの概要
本ファシリティは、プロジェクト形成の支援から政策改革の促進、資金動員までを幅広くカバーしており、主に以下の2つのウインドーで構成されている。
- グラント・ウインドー: フィジビリティ・スタディ(実行可能性調査)や環境・社会影響評価、技術支援といったプロジェクト初期段階の取り組みに対して無償資金を提供する。このウインドーに対し、日本政府は2千万ドル、英国政府は160万ドルの拠出を表明している。
- 触媒的ファイナンス・ウインドー: 他のファイナンシング・パートナーからの協調融資やリスク分担の受け皿として機能する。最初のパートナーとして、韓国輸出入銀行(Korea Eximbank)と韓国貿易保険公社(K-SURE)が、それぞれ5億ドルの覚書に署名している。
今後の予測と展望
ADBは2025年に発表した関連戦略に基づき、すでにインドにおける電池製造およびリサイクル、モンゴルでの地質データマッピング、ウズベキスタンでのAIを活用した重要金属の生産支援など、各国で具体的な取り組みを進めている。加えて、より効果的な政策調整に向けた「重要鉱物データベース」の構築もパートナーと連携して行っている。 今後、本ファシリティを通じて支援されるすべてのプロジェクトには、ADBの厳格な環境・社会配慮要件やデューデリジェンスが適用される。これにより、持続可能かつ責任あるバリューチェーンの形成が担保される。本枠組みの本格稼働により、クリーンエネルギーやデジタル技術に対する世界的な需要拡大に応えるとともに、アジア・太平洋地域における雇用創出とインクルーシブな経済成長が力強く牽引されていくことが予測される。地域内に新たな雇用や技術、付加価値(富)を創出し、特定の国だけでなく地域全体が公平に発展していくような成長を目指す。
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