台湾 中国向けAIチップ輸出規制を強化検討 米国と足並み

2026/06/22 更新: 2026/06/22

6月9日、ブルームバーグは関係者の話として、台湾政府が中国本土向けのAI半導体輸出規制をさらに強化し、米国の規制措置に足並みをそろえる方向で検討していると報じた。

関係者によると、関係当局はすでに内部協議を始めており、規制対象となる半導体の範囲を拡大することや、規制対象をファーウェイやSMICなどの特定企業に限らず、中国のすべての最終顧客に広げることが検討されているという。

現在、台湾では、許可を得ずに中国へ高性能AI半導体を輸出する行為は、専門の刑事犯罪として位置づけられていない。そのため、執法当局は多くの場合、文書偽造や輸出申告の虚偽記載など、既存の法令に基づいて責任を問うしかなく、摘発の実効性には限界がある。今後、法改正が実現すれば、関連する密輸行為は刑事責任を問われることになる。

台湾国防安全研究院の沈明室研究員は、高性能チップが中国に流出する問題は、もはや単なる商業問題ではなく、国家安全保障に関わる問題だと指摘する。

沈氏は、「これらのチップが最終的に中国へ流れるのであれば、すべて国家安全保障上の案件として扱うべきだ。法改正を行い、重い刑罰を科す必要もある。なぜなら、わずか一、二人の行為であっても、台湾の今後5年から10年の技術安全保障、あるいは半導体産業の発展に影響を及ぼしかねないからだ。そうなれば、台湾の『護国神山』も存在しなくなってしまう」と述べた。

報道によれば、台湾がアメリカの対中ハイテク封じ込め政策との連携をさらに強める今回の動きは、米台間で続く貿易交渉の一部でもある。これは、頼清徳政権の発足以降、ハイテク分野と国家安全保障をめぐって中共政権に対して取る、最も強硬な措置の一つになる可能性がある。

台湾国防安全研究院の王繍雯准研究員は、「台湾は地理的条件、製造能力、そして台湾企業が両岸で活動していることから、これまではあいまいな立場を取る余地があった。しかし、アメリカが貿易など多方面で圧力を強めるなか、台湾政府は今後、より明確な戦略を示す必要に迫られるだろう。場合によっては、明らか以上に『明確』でなければ、アメリカを安心させることはできない」と述べた。

台湾では先月、AI半導体の密輸事件が摘発されたばかりだ。3人の容疑者は複数のペーパーカンパニーを設立し、貨物名を偽って申告するなどの手口で、エヌビディアの高性能AI半導体を搭載したサーバーを日本などの第三国へ輸出し、その後、中国へ転送していた疑いが持たれている。

今年3月には、米司法当局も、米サーバーメーカー、スーパー・マイクロ・コンピューター社の関係者3人を起訴した。3人は輸出規制に違反し、エヌビディア製AI半導体を中国へ転送して利益を得ていたとされる。

実際、中共政権は近年、中国産半導体の自立化を強く推進している。しかし、高性能AI半導体の分野では、国際的な先進水準との間に依然として大きな差がある。

沈氏は、この技術格差こそが、中共があらゆる手段を使い、世界的な密輸ネットワークを通じて迂回的に禁輸対象の半導体を入手しようとする根本的な動機だと指摘する。

沈氏は、「こうしたチップを密輸で持ち込み、リバースエンジニアリングによって模倣する。そして、H200と同等レベルのチップを製造しようとする。あるいは、こうした第三世代のチップを他国へ輸出し、いわば正規品と競合させることも考えられる。いずれにしても、模倣や密輸は、元の生産国、そしてアメリカや台湾にとって大きな影響をもたらす」と述べた。

アメリカは、中共が先端計算能力をスーパーコンピューターや軍事用途に転用するのを防ぐため、2022年以降、対中半導体輸出規制を何度も強化してきた。

さらに数日前、米商務省産業安全保障局(BIS)は新たな指針を発表し、米企業に対して海外顧客の背景審査を強化するよう求めた。中国企業がシンガポールやマレーシアなどに設立した子会社に対し、先端AI半導体を販売することを制限し、中共が海外のペーパーカンパニーを利用して、エヌビディアのBlackwellなど最新の主力チップを蓄積する抜け道を封じる狙いがある。

王氏は、「米議員は、中共軍が最先端のAI半導体を入手すれば、無人作戦を中心とする新たな戦闘能力が強化されることを懸念している。現在はGPUだけでなく、これまで主に使われてきたCPUも、自律型AIが推論を重視するようになったことで再び需要が大きく伸びている。そのため、アメリカは今後、各種AIチップへの規制をさらに強化していくことになるだろう」と述べた。

分析では、米中競争はすでに貿易摩擦の段階を超え、技術と国家安全保障をめぐる全面的な対立へと発展しているとみられている。世界の先端半導体製造の重要拠点である台湾もまた、このテクノロジー戦争の最前線へと押し出されつつある。

関連特集: 台湾・香港